投稿日:2022/11/16
更新日:2023/07/06
でんきの豆知識
卒FITとは、固定価格買取制度(FIT)による買取期間が終了した発電設備のことです。FIT制度には期限があり、卒FITを迎えることで売電価格が大幅に下がってしまうため、不安を抱えている方も多いでしょう。
卒FITはデメリットだらけに感じるかもしれませんが、卒FIT後ならではの新たなメリットもあります。卒FITを迎える前にメリット・デメリットを把握しておきましょう。卒FITについて知ることで、自分に合った対策が取れるようになります。
この記事では、卒FITの概要や卒FITのメリット・デメリットなどについて詳しく解説します。併せて、FIT制度の終了や卒FITの対策案なども解説するので、FIT期間の満了を控えている方はぜひこの記事を読んで、卒FIT後への対応を検討する際の参考にしてください。
※記事中に記載されている数値や金額は、いずれも2022年10月時点の情報です。
目次
FIT制度(固定価格買取制度)とは、発電した電力を固定価格で電力会社が買い取ることを義務付けた制度です。
卒FITとは、固定価格買取制度の買取期間が終了することを指します。
FIT制度からの卒業という意味合いで、卒FITと呼ばれており、FIT制度を利用し始めた年によって卒FITの時期は異なります。
FITとは、前述したとおり「固定価格買取制度」で、再生可能エネルギーで発電した電気を、決められた価格で電力会社が一定期間買い取ります。再生可能エネルギーの普及を目指し、国によって義務付けた制度です。
再生可能エネルギーとは「太陽光」「風力」「バイオマス」「地熱」「水力」などのことで、FIT制度ではこの5つの再生可能エネルギーを対象としています。
一般家庭などでFIT制度を利用する場合は、住宅の屋根などに太陽光パネルを設置して発電する太陽光発電がメインとなり、FIT制度による買取期間は10年です。
FIT制度では、電気を利用している利用者から再エネ賦課金という形で資金を集め、電力会社が買い取る費用の一部とすることで、コストが高い再生可能エネルギー導入を推進する目的で運用されています。
売電価格は年度によって変動しています。ここでは、2012~2023年度の住宅用太陽光発電(10kW未満)の売電価格推移を紹介します。
年度 | 売電価格 | ダブル発電 |
---|---|---|
2012年度 | 42円 | 34円 |
2013年度 | 38円 | 31円 |
2014年度 | 37円 | 30円 |
2015年度 | 33円(出力制御対応機器設置義務なし) 35円(出力制御対応機器設置義務あり) |
27円(出力制御対応機器設置義務なし) 29円(出力制御対応機器設置義務あり) |
2016年度 | 31円(出力制御対応機器設置義務なし) 33円(出力制御対応機器設置義務あり) |
25円(出力制御対応機器設置義務なし) 27円(出力制御対応機器設置義務あり) |
2017年度 | 28円(出力制御対応機器設置義務なし) 30円(出力制御対応機器設置義務あり) |
25円(出力制御対応機器設置義務なし) 27円(出力制御対応機器設置義務あり) |
2018年度 | 26円(出力制御対応機器設置義務なし) 28円(出力制御対応機器設置義務あり) |
25円(出力制御対応機器設置義務なし) 27円(出力制御対応機器設置義務あり) |
2019年度 | 24円(出力制御対応機器設置義務なし) 26円(出力制御対応機器設置義務あり) |
– |
2020年度 | 21円 | – |
2021年度 | 19円 | – |
2022年度 | 17円 | – |
2023年度 | 16円 | – |
FIT制度では一定価格で買い取ってもらえる期間が定められており、期間を過ぎると固定価格買取は終了します。住宅用太陽光発電の買取期間は10年で、満了を迎えることを卒FITと呼びます。
卒FITを迎えると売電できなくなると思っている方もいますが、売電できなくなるわけではありません。FIT制度は、再生可能エネルギーの普及を目的として市場価格よりも高い価格で電力を買い取ってもらうことができました。
しかし、卒FITを迎えると一定価格での買取が終了してしまうため、買取価格はFIT期間よりも大幅に安くなります。卒FIT後の電力買取価格は電力会社によって異なりますが、7~9円程度での買取になるため、FIT制度を利用していた時期と比べると電力を売って得られる金額は大きく減少します。
卒FIT後でも売電自体はできますが、売電単価は下がるため、売電分を差し引いた毎月の電気代は高くなると予想されます。例えば、2013年に太陽光発電を導入してFIT制度を利用し始めたとしましょう。その場合の、FIT制度利用時と卒FIT後の買取価格は以下のとおりです。
このように、売電価格は1kWhあたり29.5円も安くなります。売電収入は発電量によっても変動しますが、年間発電量が4,200Kw、月350Kwと仮定し、そのうち70%を売電した場合の売電収入は以下のようになります。
余剰電力を買い取ってもらう場合、FIT期間と卒FIT後では7,000円以上の差が出てしまうため、実質の電気代は高くなります。
卒FITを迎えたとしても、太陽光発電で電気を発電していることに変わりはありません。そのため、今までのように発電した電力を自家消費することも可能です。
また、太陽光発電は発電時にCO2を排出しないクリーンな電力としての価値を持っています。これを非化石価値と呼び、証書という形で可視化したものが非化石化証書です。2018年には非化石価格取引市場が開設されており、FIT化石化証書(再エネ指定)の売電がスタートしています。
非化石化証書には以下の3種類があり、卒FIT後の電力は3に分類されています。
卒FIT電源の電力が「非FIT非化石化証書(再エネ指定)」の対象となるのは、2019年11月発電分からです。それ以前の発電分は対象とならないため注意しましょう。また、卒FIT電源由来の非化石証書は、電気とセットでの取引のみです。
卒FIT後には売電収入が減少してしまうため、卒FITのデメリットが目立ってしまいます。しかし、卒FITはデメリットだけではなくメリットもあるため、さまざまな視点で卒FITを考えてみましょう。
前述したように、FIT制度では一般的な売電価格よりも高い一定価格で電力を買い取ってもらえます。しかし、卒FITを迎えると売電単価が大幅に下がってしまうため、経済的な面ではデメリットしかありません。
卒FIT後の買取価格は電力会社などによって異なりますが、7~9円程度です。
もっとも高い2012年の売電価格と比較すると33~35円と大きな差があります。
月に100kWの電力を売電したと仮定すると、FIT制度なら3,300~3,500円、卒FIT後は700~900円となり売電収入が大きくダウンしてしまうため、実質的な電気代は上がってしまいます。
卒FIT後には、売電先の選択肢が増えるというメリットがあります。FIT期間中は、地域の大手電力会社が売電先となり、自分で好きな会社を選ぶことができませんでした。
しかし、卒FIT後にはさまざまな売電先から、自分の好きな売電先を選択することが可能です。
例えば、ガス会社やハウスメーカーなど、多くの企業が売電先の候補となります。これまで選べなかった企業や、応援している企業、よく利用している企業など、自分のライフスタイルや考え方に合った企業を利用できるようになる点はメリットです。
FIT期間中は売電一択でしたが、卒FIT後には売電以外の多様な選択肢があります。例えば、卒FITの電力を寄付できるサービスがあります。直接地域を選び寄付することもできるため、地域貢献や社会貢献などへの関心が高い方にもよいでしょう。
また、ガスとセットでお得になるサービスなどもあり、上手に利用することで節約につながります。蓄電池がなくても余った電気を預かってもらえるサービスもあるため、余剰電力が多い家庭にもよいでしょう。このように、売電だけではない卒FITプランが豊富にあるため、自分に合ったプランを選べます。
卒FIT後は、FIT期間中よりも売電収入は大幅に下がるため、経済的なメリットは少なくなります。
しかし、太陽光発電のメリットは売電収入だけではありません。例えば、日本は自然災害が頻発する国であるため、災害が起こった場合の電源確保なども重要です。
卒FITを機に防災面に目を向けるなど、太陽光発電も目的を考えてみるとよいでしょう。ここでは、卒FIT後の対策案を2つ紹介するので、ぜひ参考にしてください。
卒FITを迎えた後も、これまでの売電先へ引き続き売電することも可能です。ただし、売電単価はこれまでよりも大幅に安くなってしまうため、できるだけ高く買い取ってもらいたいと考える場合は、新しい売電先を探しましょう。売電単価は電力会社によって異なるため、さまざまな売電先を比較して条件に合った売電先を契約することが重要です。
売電ではなく電力を寄付して、地域の特産品と交換できるプランなどもあります。ふるさと納税のようなもので、お金ではなく電力を寄付することで返礼品がもらえる仕組みです。直接的な金銭メリットはありませんが、特産品などがお得に手に入ります。
卒FIT後は売電単価が下がってしまうため、売らずに自家消費するという選択肢もあります。自宅で使う電気を電力会社から買う場合、電気代の単価は19.88円/kWh(東京電力エナジーパートナー、従量電灯Bの第一段階料金)です。売電単価がこの金額よりも安い場合は、売らずに自家消費して購入する電気量を減らした方が節約になります。
太陽光発電は日中に発電するため、日中に発電した電気を蓄電池に貯めておき、発電できない夜に使うことで、購入する電気量を減らすことが可能です。
蓄電池導入にはコストがかかりますが、節約という観点だけではなく、地震や台風などで停電した場合や災害時の備えとしても活躍するため、安心感を得られるというメリットがあります。
卒FITとは、固定価格買取制度の買取期間が満了することです。
卒FIT後は売電単価が大きく下がってしまいますが、新たな売電先を自分で選んだり、寄付や自家消費といった売電以外の使い方ができたりします。引き続き売電する場合には各社の卒FIT後の売電単価を比較し、新しい売電先を探すとよいでしょう。
伊藤忠エネクス株式会社では、卒FIT後の電力買取を行っています。12月31日までのキャンペーンでは、買取価格は以下のようになります。
キャンペーンを利用することで、一般的な買取価格である7~9円よりも高く買い取ってもらえるため、卒FITを迎える方はぜひ契約をご検討ください。
https://www.solar-frontier.com/jpn/blog/pages/fit.html
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/kaitori/surcharge.html
https://www.sbenergy.jp/study/dictionary/120.html
https://www.kyocera.co.jp/solar/personal/after_fit/
https://looop-denki.com/home/denkinavi/energy/powergeneration/fit/
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/kaitori/kakaku.html#h25
https://www.tepco.co.jp/ep/renewable_energy/plan/standard.html
https://selectra.jp/environment/guides/renewable-energy/hikaseki
https://www.kankyo-business.jp/column/024868.php?page=2
https://looop-denki.com/home/denkinavi/energy/powergeneration/fit/
https://power-shift.org/%E5%A4%AA%E9%99%BD%E5%85%89%E7%99%BA%E9%9B%BB%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%83%8A%E3%83%BC%E3%81%AE%E3%81%9F%E3%82%81%E3%81%AE%E9%9B%BB%E5%8A%9B%E8%87%AA%E7%94%B1%E5%8C%96%EF%BD%86%EF%BD%81%EF%BD%91/
https://home.tokyo-gas.co.jp/power/ryokin/pv/index.html
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https://www.shouene.com/lp/guide-of-after-fit/
https://marubeni-st.co.jp/lp/trustbank
https://www.energy-choice.jp/
https://www.tepco.co.jp/ep/private/plan/old01.html
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