11年目以降の売電はどうなる?太陽光発電卒FIT後の賢い2つの選択肢

投稿日:2022/11/16

更新日:2023/03/30

でんきの比較

住宅用太陽光発電で作った電気をFIT制度の固定価格で売電できる期間は、10年間です。卒FIT後の11年目以降は、「売電を継続する」または「売電をやめて自家消費にシフトする」の2通りの選択肢から、その後の方針を選ぶ必要があります。

卒FIT後も継続して売電収入を得たい場合は、売電先の電力会社を見直しましょう。特にFIT期間中の売電先が大手電力会社だった場合、売電先を変えなければ買取価格が1kWhあたり7~9円程度に下がってしまいます。売電を継続するなら、買取価格がより高い電力会社を探すことが大事なポイントです。

この記事では、FITの概要や卒FIT後の賢い選択肢を解説します。「卒FIT後はどのように行動すればよいのか」と悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。

※記事中に記載されている数値や金額は、いずれも2022年10月時点の情報です。

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この記事を書いた人

野中 康平
野中 康平マーケティング室 室長
大学在学中、発展途上国でのボランティア活動がきっかけで
伊藤忠エネクスに入社。
入社後は一貫して電力ビジネスに携わり、電力ビジネス領域における大規模システム構築を実現。
電力のスペシャリストとして電力ビジネスの拡大に尽力している。

FITの固定価格買取制度を知る


FITとは「Feed-in-tariff」の略で、日本語では再生可能エネルギーの「固定価格買取制度」を意味します。固定価格買取制度とは、再生可能エネルギーで作られた電気を一定の価格で買い取るよう国が電力会社に義務付ける制度です。

固定価格買取制度は、太陽光発電で作られた電力の買取を国が電力会社に義務付けた2009年にスタートしました。2012年には、制度の対象を風力・水力・地熱・バイオマスに拡大しています。

本制度の目的は、再生可能エネルギーの普及です。エネルギー自給率の低さや地球温暖化対策の遅れが当時の日本で問題視されていたため、国が固定価格での買取を約束して、再生可能エネルギーへの個人や法人の参入を促す狙いがありました。

参入企業が増えた結果、価格競争が激化して技術力が向上し、太陽光発電の導入コストは大きく下がりました。これに伴い、固定価格も大幅に下がっています。固定価格の金額は毎年見直され、買取期間内に初期投資を取り戻せる金額に調整されます。

2012年度と2022年度および2023年度の住宅用太陽光(10kW未満)の固定価格は、以下のとおりです。

年度 1kWhあたりの固定価格
2012年度 42円
2022年度 17円
2023年度 16円

勘違いする方も少なくありませんが、2019年以降も固定価格買取制度そのものは終了しません。ただし、2009年にいち早く制度の利用を始めた住宅用太陽光発電では、2019年11月に10年間の買取期間が終了しました。その後は、年々卒FITを迎える設備が増えていきます。

卒FIT後の選択肢は売電継続と自家消費の2択

卒FIT後に取りうる主な選択肢は、以下の3通りです。

  • 電力会社を変えて売電を継続する
  • 売電をやめて自家消費に切り替える
  • FITで契約していた電力会社への売電を続ける

太陽光発電の設備を撤去する手もありますが、通常は自家消費か売電継続かの2択になります。以下で、3つの選択肢をそれぞれ詳しく解説します。

➀買取業者を変える


買取価格がより高い電力会社に乗り換えて、売電を継続する方法です。

住宅用太陽光発電で作った電気のうち自宅で使いきれなかった分(余剰電力)は、自分の好きな買取業者に売電できます。地域の大手電力会社(一般送配電事業者)へ売電する方も多いものの、いわゆる新電力と呼ばれる小売電気事業者への売電も可能です。

新電力の中には、利用者を増やすためにFIT制度の固定価格にプレミアム分を上乗せした価格で買い取っているケースがあります。卒FIT後の買電価格も、大手電力会社よりも新電力の方が1~3円ほど高いケースが一般的です。これを見逃す手はありません。

さらに、新電力はさまざまな卒FIT向けプランを提供しています。「買電とセットで利用するとお得になる」「特定の会社や団体を売電で応援すると返礼品がもらえる」などのサービスもあります。電力会社ごとにサービス提供エリアやサービス内容が異なるため、自分に合う乗り換え先を探しましょう。

売電先の乗り換えは、卒FIT後であればいつでも可能ですが、卒FIT前に申し込めるサービスもあります。手続きも簡単で、乗り換え元での解約手続きは必要ありません。乗り換えたい電力会社の公式サイトなどから売電契約を申し込めば、スムーズに乗り換えができます。手続きの詳細は後段で解説します。

➁自家消費で続ける

電力会社への売電をやめて、作った電力を自宅で消費する方法です。売電しなければ売電収入は得られませんが、電力会社から買う電力量を抑えられるため、家計の負担を軽減できます。

卒FIT後に買う電気は売る電気よりも単価が高いため、買電量が減ればトータルではお得です。ここでは、東京電力の売電価格と買電価格を紹介します。

単価(1kWhあたり) プラン
買電 19.88円 従量電灯Bの第1段階料金
売電 8.5円 再エネ買取標準プラン

特に電気代が高騰している状況下では、自家消費によって買電量を減らすメリットは小さくありません。さらに、蓄電池や電気自動車を導入すれば作った電気をためておけるため、安心感をより高められます。エコキュートを導入して、日中作った電気でお湯を沸かしてためておく方法も有効です。

ただし、蓄電池などの設備がない場合は電気をためられないため、日中に作った電気は日中に消費しなければなりません。昼間自宅に誰もいないご家庭では、自家消費に切り替えると損をする場合があります。ライフスタイルも考慮して、卒FIT後の対応を決めましょう。

➂売買継続

FIT期間中に契約していた電力会社に継続して売電する方法です。この方法のメリットは、新しい売電先を探す必要がなく、手間がかからない点にあります。ただし、大手電力会社に売電していた場合、卒FIT後の売電収入が大幅に下がることは覚悟しておきましょう。

以下で、主な大手電力会社が提供する標準的な卒FITプランの買取価格を紹介します。

電力会社 買取価格(1kWhあたり) プラン名
東京電力 8.5円 再エネ買取標準プラン
東北電力 9.0円 シンプル買取
関西電力 8.0円
九州電力 7.0円 買取プラン

大手電力会社への売電を継続する際の手続きは、電力会社によって異なります。卒FIT後に改めて売電契約を結ばなければならない場合もあれば、自動的に標準的なプランに移行する場合もあるなど、一様ではありません。

自動継続にならない場合に何も手続きしないでいると、自宅で使いきれなかった電気は大手電力会社が無償で引き取ります。作った電気の一部が自分の利益にならない可能性があるため、必ず電力会社の公式サイトを確認しましょう。

大手電力会社との卒FIT後の売電契約は、通常1年単位で自動更新されます。契約期間中に新電力に乗り換えても違約金は発生しません。

売買継続を行うなら買取業者の切替がベター


卒FIT後も売電を継続する場合は、より高額で買い取ってくれる買取業者への乗り換えをおすすめします。蓄電池などを導入して自家消費メインにシフトする場合でも、余った電気はできる限り高く買い取ってもらいましょう。

ここでは、主な新電力の卒FIT後の買取価格を紹介します。

新電力サービス名 買取価格(1kWhあたり)
東京エリア 関西エリア 九州エリア
ENEOS 11.0円 10.0円 8.0円
idemitsuでんき
(スタンダードプラン)
9.5円 8.5円 7.5円
みんな電力 8.5円 8.0円 7.0円
JAでんき
(ユーザー向けプラン)
9.5円 9.0円 8.0円

買取価格が大手電力会社と同じだった場合でも、付加価値が付いた独自のサービスを利用できるケースがほとんどです。

伊藤忠エネクス株式会社でも2022年12月31日までのキャンペーンを行っており、1kWhあたり12~16円という高価格買取サービスを提供します。買取エリアは、北海道・北陸・沖縄県・離島を除く全国です。伊藤忠商事の子会社であるため、初めて新電力に乗り換える方も利用しやすいのではないでしょうか。

【卒FIT vs 蓄電池】経済シミュレーションで比較

ここでは、卒FIT後に売電を継続する場合と、蓄電池を導入して自家消費メインに切り替える場合とで、実質的な電気代がどの程度変わるのかをシミュレーションして比較します。

シミュレーションの前提条件は以下のとおりです。

項目 数値 根拠
太陽光設備の発電量 4.6kW
年間発電量 4,600kWh
年間平均電気使用量 4,047kWh 環境省公式サイト
一般的な自家消費率 30% 資源エネルギー庁資料
蓄電池導入後の自家消費量 70%
売電単価 8.5円/kWh 東京電力再エネ買取標準プラン
電気料金単価 26.48円/kWh 東京電力従量電灯B第二段階料金

卒FIT後も売電を継続する場合

卒FIT後に、大手電力会社への売電を継続した場合の実質的な電気代を算出します。具体的には平均的な年間の電気代から、売電収入と自家消費による節約分を差し引いて、実質の電気代を求めます。

項目 金額
平均的な年間の電気代 107,164円
売電収入 32,149円
自家消費による節約分 28,780円
実質の電気代 46,235円

具体的な計算式は以下のとおりです。

■平均的な年間の電気代は、年間平均電気使用量に電気料金単価をかけて求めます。

年間の電気代=4,047kWh×26.48円/kWh=107,164円

■自家消費による節約分は、上記で求めた年間の電気代に自家消費率をかけて算出します。

自家消費による節約分=107,164円×30%=32,149円

■売電収入は、年間発電量から自家消費分を差し引いた余剰電力量に売電単価をかけて求めます。

自家消費量=(4,600kWh-4,047kWh×30%)×8.5円/kWh=28,780円

以上の計算から、売電継続で見込まれる実質的な年間の電気代は、46,235円です。

実質的な年間の電気代=107,164円-32,149円-28,780円=46,235円

自家消費メインにシフトする場合

蓄電池を導入して、自家消費メインに切り替えた場合の実質的な電気代を算出します。具体的な考え方は上記とまったく同じです。ただし、自家消費分が蓄電池の導入によって70%に上がり、売電分が70%から30%に下がったと仮定します。

項目 金額
平均的な年間の電気代 107,164円
売電収入 15,020円
自家消費による節約分 75,014円
実質の電気代 17,130円

具体的な計算式は以下のとおりです。

■平均的な年間の電気代は、前段で紹介したとおりです。

■自家消費による節約分は、年間の電気代に自家消費率をかけて算出します。

自家消費による節約分=107,164円×70%=75,014円

■売電収入は、年間発電量から自家消費分を差し引いた余剰電力量に売電単価をかけて求めます。

自家消費量=(4,600kWh-4,047kWh×70%)×8.5円/kWh=15,020円

以上の計算から、蓄電池の導入によって自家消費にシフトした場合に見込まれる実質的な年間の電気代は、17,130円です。

実質的な年間の電気代=107,164円-15,020円-75,041円=17,130円

今回のシミュレーションでは、自家消費メインに切り替える方が実質的な電気代は安くなりました。

項目 実質的な電気代
売電を継続する場合 46,235円
自家消費メインに切り替える場合 17,130円
差額 29,105円

ただし、蓄電池の導入には安くはない費用がかかります。容量によっても価格は異なるものの、家庭用蓄電池の費用相場は本体と工事費を含めて90万~250万円程度です。蓄電池のメリットは大きいものの、コスト面も考慮して導入するか否かを決めましょう。

10年後に自家消費へ切り替えない場合はどうなる?

卒FIT後に自家消費へ完全に切り替える予定がない場合、買取価格が高い新電力に乗り換える方法がベストです。

新電力各社は、利用者を確保するために競って魅力的なサービスを打ち出しています。利用者にとっては、自分の価値観やライフスタイルに合う会社を選びやすい状況です。新電力が撤退や廃業に追い込まれても、電気が直ちに止まる恐れはありません。

ただし、利用にあたっては注意点もあります。

  • 地域に利用できる新電力がない場合がある
  • 買電と併用しないと売電できない場合がある
  • 新電力から新電力への乗り換えで違約金がかかる場合がある
  • 撤退や廃業に伴って新たな電力会社への移行手続きが発生する可能性がある

サービス内容や利用の条件はそれぞれ異なるため、必ず公式サイトなどで詳細を確認しておきましょう。

手続きについて

乗り換え先の買取業者に売電契約を申し込む際の手順は、以下のとおりです。

  1. 経済産業省の公式サイトなどを利用して、地域で利用できる買取業者を選ぶ
  2. 売電契約中の電力会社が発行する「購入電力量のお知らせ」を用意する
  3. 乗り換え先の公式サイトにアクセスし、契約者名義や「購入電力量のお知らせ」に記載されている受電地点特定番号・顧客番号などを入力して売電契約を申し込む
  4. 契約内容をメールや書面などで確認する
  5. 切り替え作業の完了後、売電開始

大手電力会社から別の電力会社に乗り換える場合は、基本的に工事費や契約手数料、違約金などは発生しません。乗り換え元で解約手続きをしなくても、乗り換え先の電力会社と売電契約を結べば売電先が自動的に切り替わります。

まとめ

住宅用太陽光発電が卒FITを迎える11年目以降は、売電を継続するか自家消費に切り替えるかを決める必要があります。少しでも多くの売電収入を得たい人は、買取価格が高い電力会社への乗り換えを検討しましょう。

伊藤忠エネクス株式会社は、新電力の中でも特に高い買取価格での買電サービスを提供しています。2022年12月31日までのキャンペーン中は、下記の買取価格を利用できます。

  • 関東エリア:14.5円
  • 関西エリア:12円
  • 中部エリア:13円

卒FIT後であれば、いつでも申し込み可能です。発電した電気をより高く売りたいと考えている方は、ぜひ伊藤忠エネクス株式会社の利用をご検討ください。

【伊藤忠エネクス株式会社】太陽光余剰電力買取サービスについてはこちらから

参考URL
https://afterfit-itcenex.com/
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/solar-2019after/
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/solar-2019after/retail_electricity_utility.html
https://www.tepco.co.jp/ep/renewable_energy/after-fit.html
https://www.eneos.co.jp/solar-kaitori/
https://enechange.jp/articles/feed-in-tariff
https://makefri.jp/work/7551/
ttps://evdays.tepco.co.jp/entry/2022/01/06/000027#FIT
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/kaitori/surcharge.html
https://www.meti.go.jp/press/2021/03/20220325006/20220325006.html
https://news.mynavi.jp/taiyoko/31389#toc5
https://wajo-holdings.jp/media/3338
https://price-energy.com/solar_plan

従量電灯B・C|東京電力エナジーパートナー
https://www.tepco.co.jp/ep/private/plan/old01.html
https://www.tepco.co.jp/ep/renewable_energy/plan/standard.html
https://www.sunjunior.co.jp/blog/3969/#baiden
https://www.eneos.co.jp/solar-kaitori/?ag_code1=9503&ag_code2=0001
https://www.env.go.jp/earth/ondanka/kateico2tokei/2019/result3/detail1/index.html
https://www.meti.go.jp/shingikai/santeii/pdf/050_01_00.pdf
https://datsutanso-ch.com/energy/solar/electric-generating-capacity.html
https://www.liberal-solution.co.jp/column/?id=1615451634-547763#index_3
https://looop-denki.com/home/denkinavi/energy/powergeneration/fit/
https://tsunagaru.tohoku-epco.co.jp/menu/
https://kepco.jp/ryokin/kaitori/solar_power/
https://www.kyuden.co.jp/rate_purchase_afterfit.html
https://denki.idemitsu.com/kaitori/
https://minden.co.jp/afterfit/
https://zennoh-energy.co.jp/ja-denki/after-fit/
https://e-hidakaya.com/news/%E8%93%84%E9%9B%BB%E6%B1%A0%E3%82%B7%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%A0%E3%81%AE%E7%9B%B8%E5%A0%B4%E3%81%8C%E7%9F%A5%E3%82%8A%E3%81%9F%E3%81%84%EF%BC%81%E6%B0%97%E3%81%AB%E3%81%AA%E3%82%8B%E8%B2%BB%E7%94%A8-2/
https://www.taiyoko-kakaku.jp/product/chikudenchi

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