投稿日:2025/04/01
更新日:2025/03/31
でんきの節約術
エアコンは、広範囲の温度や湿度をスピーディに調整したり維持したりすることに特化した家電です。夏が近づいてくるとエアコンをつける時間や回数が増えるので、電気代の値上がりが気になる方も多いでしょう。また冷房ではなく除湿でも涼しい風が出てくるので、除湿にしていた方がお得だという声もありますが、本当なのでしょうか。
本記事では、エアコンの冷房と除湿はどちらの方が電気代がお得なのかを解説します。機能を使い分けるポイントや、エアコンの除湿機能を使いながら月々の電気代を節約する方法も併せてご紹介するので、ぜひ参考にしてください。
※本記事の内容は2025年3月時点の情報です
目次
除湿は主に3種類に分けられます。また全ての除湿方式が冷房の代わりとして室温を下げられるわけではありません。ここでは除湿の種類について詳しく解説します。ご家庭のエアコンがどの種類に当てはまるのか、ぜひ確認してみてください。
一つ目の除湿方式は、弱冷房除湿です。弱冷房除湿では、まず取り込んだ空気をエアコン内の熱交換器で急激に冷やします。その際、空気中に含まれていた水分が水滴となり、熱交換器に付着して空気中の湿度が下がります。冷やされた空気はそのままエアコンの外に放出されるので、除湿であるにもかかわらず冷風が出るのです。
あくまでも機能の目的は除湿なので、温度の下がり方は冷房と比べると緩やかですが、室温によっては肌寒さを感じることもあります。
二つ目の除湿方式は、再熱除湿です。再熱除湿では弱冷房除湿と同様、取り込んだ空気をエアコン内の熱交換器で急激に冷やします。その後温度と湿度の下がった空気を再び温めてからエアコンの外に放出します。そのため、室温を変えずに湿度だけを下げることが可能です。
ただし、空気を温める処理を行うため、弱冷房除湿よりも消費電力が大きくなり電気代も高くなる傾向にあります。
三つ目の除湿方法は、ハイブリッド除湿です。ハイブリッド除湿も、他の除湿方式と同様、取り込んだ空気をエアコン内の熱交換器で急激に冷やします。その後、室内の空気と混ぜ合わせたり温める空気量を細かく調整したりすることで、消費電力を抑えつつ空気を適温に近づけます。
弱冷房除湿の除湿能力と再熱除湿の室温維持という良いところを組み合わせつつ、再熱除湿の電気代増加という弱点を克服した方式といえます。
自宅で使用しているエアコンの除湿機能がどの方式を採用しているのかは、リモコンの表記や取扱説明書、カタログ、メーカーのWebサイトなどを見れば分かります。
例えば日立のエアコンの場合、「カラッと除湿」と書いてあるものは再熱除湿、「ソフト除湿」「3モード除湿」と書いてあるものは弱冷房除湿です。
※参考:HITACHI.「除湿機能が「再熱除湿方式」か「弱冷房方式」かを知りたいです。」.https://kadenfan.hitachi.co.jp/support/ra/q_a/a41.html ,(2025-03-11).
エアコン単体の電気代は、以下の計算式で算出できます。
消費電力とは、家電を動かす際に必要な電力のことです。取扱説明書やメーカーのWebサイトでは、消費電力や定格消費電力などと明記されています。
電力量料金単価は1kWの電力を1時間使用したときの料金単価で、電力会社によって金額の設定が異なります。詳しくは契約している電力会社の会員ページや、検針票(電気ご使用量のお知らせ)で確認してください。
エアコンの消費電力は、外気温や室温、部屋の広さなど稼働条件によって変動します。また、冷房と除湿はそもそも運転の目的が異なるので、どちらが安いかは一概には言えません。しかし、消費電力の大きさによって、電気代の傾向を掴むことは可能です。
消費電力の大きい順にエアコンの機能を並べると、以下のようになります。
再熱除湿 > 冷房 > ハイブリッド除湿 > 弱冷房除湿
消費電力が大きいほど、電気代が高くなりやすいです。冷房はハイブリッド除湿や弱冷房除湿よりも電気代が高くなりやすいですが、再熱除湿の電気代よりは安くなる傾向にあります。そのため「除湿の方が冷房よりも安い」とは一概には言えないのです。
エアコンの電気代が高くなるかどうかは、エアコンを使う部屋の広さや室温・湿度、設定温度・設定湿度、自宅の気密性・断熱性能といった条件によって異なります。そのため状況に合わせて機能を使い分けたり、他の家電を併用するのがおすすめです。
ここでは代表的なシーンごとに、エアコンの冷房と除湿を使い分けるポイントをご紹介します。
室温が高くて今すぐに涼しくしたいという場合は、冷房機能を使いましょう。室温と設定温度の差が大きいと消費電力も大きくなりやすいですが、冷房能力が高い機種であればスピーディに温度を下げられるので、フルパワーで稼働する時間を短くできます。またサーキュレーターを併用して、エアコンから出る冷風を効率よく部屋全体に広げれば、エアコンの消費電力が大きい時間をさらに短くできます。
温度や湿度が高いと熱中症のリスクが高まってしまうので、冷房をつけた上で電気代を抑える対策を取ることが大切です。
湿度が高くジメジメしているときは、除湿機能を使いましょう。複数の除湿機能が搭載されているエアコンであれば、室温がやや高い場合は弱冷房除湿を、肌寒い場合は再熱除湿を選べます。
厚生労働省によると、湿度は40%以上70%以下が衛生上良好であると定められています。また東京都の「健康・快適居住環境の指針」によると、湿度は40%以上60%以下を目安にすると明記されています。上限に10%の違いはあるものの、雨が続く時期は湿度が上がりやすいのでエアコンの設定湿度は低めにするのがよいでしょう。
※参考:厚生労働省.「建築物環境衛生管理基準について」.https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/seikatsu-eisei10/ ,(2025-03-12).
※参考:東京都.「健康・快適居住環境の指針」.https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/hokeniryo/web_zenbun1 ,(2025-03-12).
部屋干しする洗濯物を素早く乾かすなら、除湿をつけて部屋の湿度が高くならないように調整しましょう。室温が高いほど乾きが早くなるので、弱冷房除湿よりも再熱除湿の方が適しています。
またサーキュレーターを併用し、風を当てて洗濯物の水分が気化するのを促すのも有効です。洗濯物が早く乾けば、部屋干し特有の嫌な臭いも防げます。
質の良い睡眠を取るなら、就寝前に冷房から除湿に切り替えましょう。人は眠りに入る際に手や足から熱を放出して、深部体温を下げます。そのため部屋が涼しいと体温が下がりやすく、スムーズな入眠につながります。ただし寝ている間ずっと部屋が冷えていると、自律神経が乱れるので睡眠の質に悪影響を及ぼす可能性があります。
就寝前までは冷房をつけて室温をしっかり下げ、布団に入る際に除湿へ切り替えるのが良いでしょう。
主要メーカーのエアコンには、独自の除湿機能が搭載されている機種が多く、消費者は季節や部屋の状況に適した除湿機能を選択できます。ここからは、国内の主要メーカーが提供している代表的な除湿機能をご紹介します。お使いのエアコンの除湿機能に関する理解を深めたり、新しく買い替えたりする際の参考にしてください。
「霧ヶ峰」シリーズで知られる三菱電機のエアコンには、5つの除湿機能があります。中でも赤外線センサー「ムーブアイmirA.I.+」やバイタルセンサー「エモコアイ」搭載のエアコンでは、室温・湿度だけではなく体感温度や心地良さを分析できるのが特長です(FZ、FD、Z、ZDシリーズに搭載)。対象シリーズや除湿機能の概要は、以下の通りです。
機能 | 搭載しているシリーズ | 機能の概要 |
新湿度制御 | FZ、Z、X、R、S、GE、FD、ZD | 設定温度に到達したら送風を停止して、エアコン内部にたまった水分が空気中に戻るのを防ぐ |
おまかせA.I.自動 | FZ、Z、FD、ZD | 室温と湿度と体感温度をAI判定して冷房、除湿、送風を自動で切り替える |
さらっと除湿冷房 | Z、X、ZD | 冷房と再熱除湿を自動で切り替えて、快適な室温・湿度をキープする。リモコンで10%ずつ湿度を設定できる |
プレミアム除湿 | FZ、FD | 2つのファンを制御し室温と湿度をコントロールする(弱冷房除湿) |
スマート除湿 | R、S、XD、FL(2021年) | エアコンのファンの回転数を制御して除湿する(弱冷房除湿) |
選べる3モード除湿 | GE | 除湿の強さを弱・標準・強の3段階から選べる(弱冷房除湿) |
ダイキンは、除湿機能を25年以上の歳月をかけて進化させており、現在発売中の機種には以下4つの除湿機能が採用されています。対象シリーズや除湿機能の概要は、以下の通りです。
機能 | 搭載しているシリーズ | 機能の概要 |
さらら除湿 | SX | 湿度をコントロールする「デジクル制御」を搭載。室内の暖かい温度と一緒に送風するので、寒くなりにくい |
さらら除湿(ハイブリッド方式) | MX、GX | 再熱除湿とさらら除湿、弱冷房除湿の中から部屋の状況に合わせて熱交換器の除湿方式を切り替え |
さらら除湿(リニアハイブリッド方式) | RX、AX、DX | さらら除湿(ハイブリッド方式)よりも湿度や温度の調整をより細かく行う |
9段階セレクトドライ | CX、VX、E、HX、KX | 弱めの冷房運転と停止を繰り返すことで、湿度を下げる。除湿量に応じて9段階の設定が可能 |
パナソニックの「エオリア」シリーズは、部分的に熱交換器を冷やす「パーシャル制御」を採用しています。対象シリーズや除湿機能の概要は、以下の通りです。
機能 | 搭載しているシリーズ | 機能の概要 |
快適除湿モード | LX、X、EX、GX、PX | 室内外の温度差に応じて熱交換器の一部分だけで除湿を行う |
選べるしつど | LX、X、EX | リモコンで湿度を3段階に設定可能 |
冷房除湿モード | LX、X、EX、GX、J、PX | 始めは冷房運転し、設定温度に近づくと除湿に切り替わる。弱く冷やしながら湿度をキープする |
衣類乾燥モード | LX、X、EX、GX、PX | 湿度が低いときは強めの風量で洗濯物の水分を放出、空気中の湿度が高くなったら、風量を落として除湿モードに切り替える |
日立のエアコンは3つの除湿機能に大別されますが、細かいモード設定もあるのでシーンに合わせた使い方ができます。中でもX、Sシリーズに搭載されている「くらしカメラAI」は、湿度が高いエリアを判別して優先的に除湿可能です。対象シリーズや除湿機能の概要は、以下の通りです。
機能 | 搭載しているシリーズ | 機能の概要 |
カラッと除湿 | X、S、W | 再熱除湿方式を採用。細かいモード設定が可能
|
3モード除湿 | G | 自動で室温をコントロールする「自動除湿」、素早く除湿する「パワフル自動」、お好みの室温が設定できる「手動除湿」の3モードを選べる |
ソフト除湿 | D | 風量をコントロールしながら除湿。弱冷房除湿方式 |
シャープのエアコンの除湿機能には「氷結ドライ」と「コアンダ除湿」の2種類があります。氷結ドライは独自開発のファンモーターを搭載し、従来製品よりも除湿力はアップしつつも消費電力を抑えた設計で、電気代にも配慮されています。対象シリーズや除湿機能の概要は、以下の通りです。
機能 | 搭載しているシリーズ | 機能の概要 |
氷結ドライ | V、E | ファンの回転数を極力落とし、風量を弱めることで冷気が広がるのを抑える |
コアンダ除湿 | V、E、DG、P | 除湿時の冷風を天井側に吹き上げて、風が体に当たらないよう調整 |
雨が続き、室内がジメジメしたり部屋干しの機会が増えたりすると、長時間エアコンの除湿機能を使ってしまいがちです。ここではエアコンの除湿機能を使いつつ、月々の電気代を抑えられる方法をご紹介します。
エアコンの機種によっては自動で除湿モードに切り替えたり、風量を調整したりする機能が付いています。微風や弱に設定していた方が電気代を抑えられると思いがちですが、風量が弱いと設定温度や設定湿度に到達するまでの時間が長くなってしまい、かえって余計な電力を消費しかねません。
手動で機能や設定を小まめに調整してもよいのですが、電気代を削減したいなら風量や風向、除湿設定を自動にするのがおすすめです。また複数の除湿方式を利用できる機種であれば、エアコンが室温や湿度に応じて自動で弱冷房除湿と再熱除湿を使い分けるので、肌寒さも気になりにくいでしょう。
外気温の影響を減らすのも重要なポイントです。温度が高いほど空気中には多くの水蒸気が含まれるので、外気温の影響で室温が上がると湿度も上がりやすいです。夏は高温多湿になりやすいので、窓に断熱シートを貼ったり遮光・遮熱カーテンに付け替えたりしましょう。また室外機に日よけを付けて直射日光を避けるのも重要です。直射日光で室外機が熱くなり過ぎるとエアコンの運転効率が下がってしまい、余計な電気代がかかります。
エアコンのフィルターを定期的に掃除するのも、運転効率を維持するポイントです。フィルターがほこりや汚れで目詰まりを起こすと、空気を取り込む際に余計なエネルギーを使ってしまいます。パナソニックの調査によると、1年間掃除をしていないエアコンとお手入れをしたエアコンでは、年間で25%も電気代に差が出てしまうことが分かっています。エアコンに自動お掃除機能がない場合は、定期的にフィルターに付いたほこりを掃除機などで吸い取りましょう。汚れがひどい場合は、取扱説明書に書いてある手順に沿って手洗いしてください。
室外機の汚れを放置することも、運転効率が下がる原因になります。室外機の周りに落ち葉やごみがたまっていないか、ドレンホースの中に汚れはたまっていないか、室外機の裏面にあるフィンは目詰まりしていないかといった点をチェックしましょう。
※参考:Panasonic.「電気代アップに備えて知りたい。冬のエアコン節電ポイント」.https://panasonic.jp/aircon/air_letter/news/power_saving_02.html ,(2025-03-19).
先述した通り、主要メーカーが提供する新しいエアコンにはさまざまな除湿機能が付いています。AIで室温や湿度、体感温度を判別し運転を調節するものや部屋干しに対応したもの、カビや結露の発生を抑制するものなど、メーカーによって特色豊かなのでご家庭のニーズに合ったエアコンを探してみてください。
またエアコンを始めとする電化製品は、地球温暖化防止のために省エネ化が進んでいます。一般社団法人 家電製品協会によると、10年前のエアコンと比較すると、新しい機種はJIS規格に基づく条件下での消費電力量が15%程度下がっており、電気代に換算すると約4,150円もお得になっています。
エアコンの寿命は10年程度といわれているので、使い始めてからそろそろ10年を迎える方は買い替えも検討してみましょう。
※参考:一般社団法人 家電製品協会.「スマートライフおすすめBOOK 2024」.https://osusume-book.meclib.jp/shouene-kaden-2024/book/#target/page_no=1 ,(2025-03-12).
今契約している電力会社から新電力に切り替えたり、より安い料金プランに変更したりするのも電気代の削減につながります。電力会社によっては、質問に答えるだけでおおよその電気代をシミュレーションできるので、ご家庭に合った料金プランを選びやすいです。
例えばエネクスライフサービスが提供する「TERASELでんき」は、ご利用の電力会社・料金プラン・月々の電気代が分かれば、乗り換え後にどのくらいお得になるのかを簡単にシミュレーションできます。30秒程度で入力できるので、ぜひお試しください。
梅雨から夏にかけて、エアコンを使う頻度や時間が増えます。除湿をつけても涼しい風が出るので、電気代を節約しようと除湿機能で暑さをしのごうと考える方もいるでしょう。しかし、除湿機能の本来の目的はあくまでも室内の湿度を下げることなので、室温が快適な温度になるまでには時間がかかります。本記事を参考に、エアコンを使う目的やシーンによって、冷房と除湿の機能を使い分けてください。センサーやAIカメラを搭載しているエアコンなら、自動設定にするのがおすすめです。
主要メーカーでは多種多様な除湿機能を搭載しており、省エネ性能も向上しています。使用年数によっては買い替えも視野に入れつつ、電気代を節約する方法を実践してみましょう。
電力会社の乗り換えを検討しているなら、TERASELでんきがおすすめです。TERASELでんきでは、ライフスタイルに合わせて以下の4つからプランを選べます。
電気の使い方に適したプランを選べば、切り替えるだけで月々の電気代を節約できる可能性もあります。エアコンを使いつつ電気代の負担を減らしたい方は、TERASELでんきへの乗り換えをご検討ください。
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